WORK & MONEY
無計画は後悔の元!マイホーム購入で失敗しないための資金計画の進め方
多くの人にとって住宅は人生で最も高い買い物、と言われています。持ち家派でも多くの人は、住宅を購入するのは一生のうちに1度か2度ではないでしょうか。そのため、ほとんどの子育てファミリーにとって住宅購入は初めての経験。今回はマイホーム購入の前に知っておきたい住宅の諸費用、予算の決め方、住宅ローンの選び方など資金計画の話をします。
住宅購入の総予算~諸費用はいくらかかるの?~
住宅購入の際には、物件の価格だけではなく諸費用を合わせた総予算を把握する必要があります。物件の価格は広告などにも明記していますが、それ以外にかかる諸費用は分かりにくいものです。諸費用にはどのようなものがあるか見ていきましょう。
主な諸費用
・登記費用…所有権移転登記(建売住宅やマンション購入の場合)、表題登記・保存登記(新築の場合)
・火災保険料・地震保険料
・融資費用…事務手数料、ローン保証料、印紙代、抵当権設定費用など
・仲介手数料(仲介業者が売買の仲介をした場合)
・印紙代…売買契約、建築請負契約、住宅ローンの契約書など
・修繕積立基金(新築マンションを購入する場合)
・不動産取得税
主な諸費用を挙げましたが、具体的にどれくらいかかるかイメージするのは難しいと思います。これらの諸費用は合計で、物件価格の5%から10%くらいが目安になります。金額に幅があるのは、購入する住宅が新築か中古か、誰から買うか、いくら借りるかなどによって諸費用が大きく変わるからです。実際には住宅ごとに諸費用を計算し、事前にしっかりと把握しておく必要があります。
なお、諸費用以外にも、マイホームに住み始めるためには引越し代、家具家電、照明器具、カーテンなどの住居関連費用もかかります。これらも引き続き使うものと新規で購入するものを事前に決めて予算を立てておきましょう。
いくらの住宅が買えるの? 住宅の予算の決め方
希望のマイホームを見つけても、自分たちが購入できる物件なのかは別。
住宅の予算は「今出せる自己資金+借りられる住宅ローン」で決まります。それぞれの金額を知ることにより、今自分たちが買える住宅の価格がいくらになるのかが分かります。
(1)用意する自己資金の考え方
まず原則として、「物件価格の1割以上+諸費用分」を自己資金として用意しましょう。
例えば、物件価格が4,000万円、諸費用が7%の280万円かかる場合、自己資金の目安は400万円(物件価格の1割)+280万円=680万円です。これから自己資金を貯めようとしている人は、このようにして計算した金額が自己資金の目標額になります。
自己資金が多いほど住宅ローンの金利を優遇する銀行もあります。また自己資金が多い分住宅ローンを減らすことができて返済も楽になるため、一定額の自己資金を準備しておくことが大切です。
自己資金の調達方法は主に2つです。
1つは預貯金を使う方法。
この場合、預貯金のほとんどを自己資金に使って手元に資金がなくなってしまうと、万が一のときに生活に支障をきたす恐れがあります。生活費の1年分程度は緊急時の資金として手元に残し、余剰部分を自己資金とすることが望ましいと言えます。
もう1つは親や祖父母からの住宅取得資金贈与です。
贈与税は、1年間に110万円の基礎控除額を超えるとかかりますが、住宅資金を贈与する場合には特例があり、一定の条件を満たせば、一般住宅の場合700万円、省エネ等住宅(※1)の場合は1,200万円まで贈与税がかかりません。
(※1)省エネ等住宅とは、断熱性能等級4以上、一次エネルギー消費等級4以上、高齢者等配慮対策等級3以上、耐震等級2以上、免震建築物のいずれかに該当する住宅。
なお、消費税が10%に引き上げられた場合は、あわせて住宅資金贈与の上限額も以下の通り引上げられる予定です。
・2019年4月~2020年3月までに契約の場合
一般住宅…2,500万円 省エネ等住宅…3,000万円
・2020年4月~2021年3月までに契約の場合
一般住宅…1,000万円 省エネ等住宅…1,500万円
親などからの住宅資金の贈与が期待できる人は、上記の非課税枠を上手に使い自己資金に充当しましょう。
(2)借りられる住宅ローンはいくら?
住宅ローンの借入可能額は、各金融機関が定めている返済負担率(年収に対する返済額の割合)によって決まります。
例えば、住宅金融支援機構のフラット35では、給与収入400万円以上の人の返済負担率は35%が上限です。民間の銀行でも同程度ですが、フラット35では審査の際、返済負担率を実際の融資金利で計算するのに対し、民間の銀行の場合は「審査金利」という融資金利とは別に定めている審査用の金利で計算をします。
銀行は将来、金利が審査金利の水準まで上がったときにも返済を続けることができるかをチェックするために、審査金利を実際に融資するときの金利よりも高く設定しています。
銀行により審査金利は異なりますが、例えば審査金利が3%の銀行の場合、返済負担率の上限を実際の融資金利の1%で計算してしまうと、審査時に3%で返済負担率を計算した際に返済負担率が上限をオーバーします。そのため、融資金利で想定していたよりも借入可能額が少なくなってしまうことになります。
民間の銀行の借入可能額を計算する際には、審査金利を用いて計算をしましょう。
もうひとつ、ここで気をつけたいのが、審査による借入可能額と、無理なく返せる借入額は違うということです。金融機関が返済負担率を審査する際の年収は税込年収のことですが、実際の手取り収入は社会保険料や税金等が引かれるために少なくなります。
例えば、税込年収500万円の会社員の手取り年収は、家族構成等の条件によっても異なりますが、約72%の360万円くらいです。年間の返済額が175万円の場合、税込年収500万円でみると返済負担率は35%ですが、手取り年収360万円に対してはなんと48.6%になり、手取額のほぼ半分をローンの返済に充てることになってしまいます。
少なくとも「手取り年収」の35%以内に収まる返済額から借入額を決めるようにしましょう。
それでは、年収500万円(手取り年収約360万円)の人が借りられる住宅ローンはいくらになるか計算してみましょう。なお金利1.2%、返済期間35年の場合、借入額100万円あたりの毎月返済額は2,917円です。
まずは、この人が年間でいくらまで住宅ローン返済にあてられるか、返済負担率35%として計算します。
【年間の返済想定額】手取り年収360万円×返済負担率35%=126万円
この人は年間126万円返済できる想定であることが分かりましたので、次に毎月の返済可能額を計算します。
【毎月の返済可能額】126万円÷12カ月=105,000円
金利1.2%、返済期間35年の場合、借入額100万円あたりの毎月返済額は2,917円ですが、この人はその約36倍の105,000円まで返済が可能なので、100万円の36倍になるまで借りても返済することができます。
【借入可能額】36.0×100万円=3,600万円
つまり、借入可能額は3,600万円ということになります。
(3)住宅の予算は?
前述の(1)と(2)を合計すれば、住宅予算の目安が分かります。
仮に自己資金を700万円準備できる人の場合、
(1)700万円+(2)3,600万円=4,300万円が総予算。
総予算の内、諸費用の割合が7%の場合、購入できる物件の価格目安は
4,300万円÷1.07≒4,020万円
となります。
なお、共働きの夫婦の場合、妻の収入を合算したり、夫婦それぞれが住宅ローンを組んだりすることによって借入額を増やすことができます。それぞれの勤務先や年収などによって融資条件が変わるので、詳細は各金融機関で確認してください。
もしも、どうしても希望の物件に予算が足りない場合は、無理をして購入するのではなく、自己資金を増やしたり、年収が上がり借入可能額が増えたりすることによって希望予算に手が届くまで購入のスケジュールを延ばすことも検討しましょう。
住宅ローン選びのポイントは備えと返済計画
ここでは住宅ローンの選び方について説明します。
変動型? 固定型? どちらを選べば良いの?
住宅ローンの金利タイプには、「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3つのタイプがあり、どのタイプを選べば良いのか迷ってしまいます。
全期間固定型の代表的なローンは住宅金融支援機構のフラット35、また民間銀行は変動型や固定期間選択型を主力のローンとしていることが多いです。
住宅金融支援機構の調査(※2)によると、2018年下期に変動型を利用した人の割合は60.3%と6割を超え、固定期間選択型は25.1%、全期間固定型は14.6%となっています。
変動型のほうが固定型よりも金利が低く、金利の差が広がっていることが、変動型が選ばれる大きな理由です。
しかし全期間返済額が変わらない固定型に対し、変動型は将来金利上昇のリスクがあり、返済額の負担が重くなる可能性があります。変動型を選択するならば、金利が上昇し返済額が増えることを想定した場合に、繰り上げ返済などの備えができているかが重要なポイントです。
住宅ローンの返済期間の決め方は?
住宅ローンの返済期間を決めるときに最も大切なポイントは2つです。
1つは定年までに住宅ローンは完済してしまうこと。
老後は年金が主な収入源となるため、住宅ローンを残しておくと生活設計が厳しくなってしまいます。
もう1つは退職金で繰上げ返済しないこと。
退職金は大切な老後資金。なるべく手を付けずに残しておくようにしましょう。
そのためには、返済額に無理がない範囲で、当初の返済年数をできるだけ短くしておくことが大切です。
また繰り上げ返済を効果的に行ないましょう。住宅ローンの返済に関しては以下の記事に詳しく書いていますのでぜひ参考にしてください。
冒頭に述べたように、住宅は人生最大の買い物です。お金の面でも後悔しないよう賢い資金計画を立て、素敵なマイホームを購入してください。
執筆者プロフィール:
橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。
・登記費用…所有権移転登記(建売住宅やマンション購入の場合)、表題登記・保存登記(新築の場合)
・火災保険料・地震保険料
・融資費用…事務手数料、ローン保証料、印紙代、抵当権設定費用など
・仲介手数料(仲介業者が売買の仲介をした場合)
・印紙代…売買契約、建築請負契約、住宅ローンの契約書など
・修繕積立基金(新築マンションを購入する場合)
・不動産取得税
主な諸費用を挙げましたが、具体的にどれくらいかかるかイメージするのは難しいと思います。これらの諸費用は合計で、物件価格の5%から10%くらいが目安になります。金額に幅があるのは、購入する住宅が新築か中古か、誰から買うか、いくら借りるかなどによって諸費用が大きく変わるからです。実際には住宅ごとに諸費用を計算し、事前にしっかりと把握しておく必要があります。
なお、諸費用以外にも、マイホームに住み始めるためには引越し代、家具家電、照明器具、カーテンなどの住居関連費用もかかります。これらも引き続き使うものと新規で購入するものを事前に決めて予算を立てておきましょう。
希望のマイホームを見つけても、自分たちが購入できる物件なのかは別。
住宅の予算は「今出せる自己資金+借りられる住宅ローン」で決まります。それぞれの金額を知ることにより、今自分たちが買える住宅の価格がいくらになるのかが分かります。
まず原則として、「物件価格の1割以上+諸費用分」を自己資金として用意しましょう。
例えば、物件価格が4,000万円、諸費用が7%の280万円かかる場合、自己資金の目安は400万円(物件価格の1割)+280万円=680万円です。これから自己資金を貯めようとしている人は、このようにして計算した金額が自己資金の目標額になります。
自己資金が多いほど住宅ローンの金利を優遇する銀行もあります。また自己資金が多い分住宅ローンを減らすことができて返済も楽になるため、一定額の自己資金を準備しておくことが大切です。
自己資金の調達方法は主に2つです。
1つは預貯金を使う方法。
この場合、預貯金のほとんどを自己資金に使って手元に資金がなくなってしまうと、万が一のときに生活に支障をきたす恐れがあります。生活費の1年分程度は緊急時の資金として手元に残し、余剰部分を自己資金とすることが望ましいと言えます。
もう1つは親や祖父母からの住宅取得資金贈与です。
贈与税は、1年間に110万円の基礎控除額を超えるとかかりますが、住宅資金を贈与する場合には特例があり、一定の条件を満たせば、一般住宅の場合700万円、省エネ等住宅(※1)の場合は1,200万円まで贈与税がかかりません。
(※1)省エネ等住宅とは、断熱性能等級4以上、一次エネルギー消費等級4以上、高齢者等配慮対策等級3以上、耐震等級2以上、免震建築物のいずれかに該当する住宅。
なお、消費税が10%に引き上げられた場合は、あわせて住宅資金贈与の上限額も以下の通り引上げられる予定です。
・2019年4月~2020年3月までに契約の場合
一般住宅…2,500万円 省エネ等住宅…3,000万円
・2020年4月~2021年3月までに契約の場合
一般住宅…1,000万円 省エネ等住宅…1,500万円
親などからの住宅資金の贈与が期待できる人は、上記の非課税枠を上手に使い自己資金に充当しましょう。
(2)借りられる住宅ローンはいくら?
住宅ローンの借入可能額は、各金融機関が定めている返済負担率(年収に対する返済額の割合)によって決まります。
例えば、住宅金融支援機構のフラット35では、給与収入400万円以上の人の返済負担率は35%が上限です。民間の銀行でも同程度ですが、フラット35では審査の際、返済負担率を実際の融資金利で計算するのに対し、民間の銀行の場合は「審査金利」という融資金利とは別に定めている審査用の金利で計算をします。
銀行は将来、金利が審査金利の水準まで上がったときにも返済を続けることができるかをチェックするために、審査金利を実際に融資するときの金利よりも高く設定しています。
銀行により審査金利は異なりますが、例えば審査金利が3%の銀行の場合、返済負担率の上限を実際の融資金利の1%で計算してしまうと、審査時に3%で返済負担率を計算した際に返済負担率が上限をオーバーします。そのため、融資金利で想定していたよりも借入可能額が少なくなってしまうことになります。
民間の銀行の借入可能額を計算する際には、審査金利を用いて計算をしましょう。
もうひとつ、ここで気をつけたいのが、審査による借入可能額と、無理なく返せる借入額は違うということです。金融機関が返済負担率を審査する際の年収は税込年収のことですが、実際の手取り収入は社会保険料や税金等が引かれるために少なくなります。
例えば、税込年収500万円の会社員の手取り年収は、家族構成等の条件によっても異なりますが、約72%の360万円くらいです。年間の返済額が175万円の場合、税込年収500万円でみると返済負担率は35%ですが、手取り年収360万円に対してはなんと48.6%になり、手取額のほぼ半分をローンの返済に充てることになってしまいます。
少なくとも「手取り年収」の35%以内に収まる返済額から借入額を決めるようにしましょう。
それでは、年収500万円(手取り年収約360万円)の人が借りられる住宅ローンはいくらになるか計算してみましょう。なお金利1.2%、返済期間35年の場合、借入額100万円あたりの毎月返済額は2,917円です。
まずは、この人が年間でいくらまで住宅ローン返済にあてられるか、返済負担率35%として計算します。
【年間の返済想定額】手取り年収360万円×返済負担率35%=126万円
この人は年間126万円返済できる想定であることが分かりましたので、次に毎月の返済可能額を計算します。
【毎月の返済可能額】126万円÷12カ月=105,000円
金利1.2%、返済期間35年の場合、借入額100万円あたりの毎月返済額は2,917円ですが、この人はその約36倍の105,000円まで返済が可能なので、100万円の36倍になるまで借りても返済することができます。
【借入可能額】36.0×100万円=3,600万円
つまり、借入可能額は3,600万円ということになります。
(3)住宅の予算は?
前述の(1)と(2)を合計すれば、住宅予算の目安が分かります。
仮に自己資金を700万円準備できる人の場合、
(1)700万円+(2)3,600万円=4,300万円が総予算。
総予算の内、諸費用の割合が7%の場合、購入できる物件の価格目安は
4,300万円÷1.07≒4,020万円
となります。
なお、共働きの夫婦の場合、妻の収入を合算したり、夫婦それぞれが住宅ローンを組んだりすることによって借入額を増やすことができます。それぞれの勤務先や年収などによって融資条件が変わるので、詳細は各金融機関で確認してください。
もしも、どうしても希望の物件に予算が足りない場合は、無理をして購入するのではなく、自己資金を増やしたり、年収が上がり借入可能額が増えたりすることによって希望予算に手が届くまで購入のスケジュールを延ばすことも検討しましょう。
住宅ローン選びのポイントは備えと返済計画
ここでは住宅ローンの選び方について説明します。
変動型? 固定型? どちらを選べば良いの?
住宅ローンの金利タイプには、「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3つのタイプがあり、どのタイプを選べば良いのか迷ってしまいます。
全期間固定型の代表的なローンは住宅金融支援機構のフラット35、また民間銀行は変動型や固定期間選択型を主力のローンとしていることが多いです。
住宅金融支援機構の調査(※2)によると、2018年下期に変動型を利用した人の割合は60.3%と6割を超え、固定期間選択型は25.1%、全期間固定型は14.6%となっています。
変動型のほうが固定型よりも金利が低く、金利の差が広がっていることが、変動型が選ばれる大きな理由です。
しかし全期間返済額が変わらない固定型に対し、変動型は将来金利上昇のリスクがあり、返済額の負担が重くなる可能性があります。変動型を選択するならば、金利が上昇し返済額が増えることを想定した場合に、繰り上げ返済などの備えができているかが重要なポイントです。
住宅ローンの返済期間の決め方は?
住宅ローンの返済期間を決めるときに最も大切なポイントは2つです。
1つは定年までに住宅ローンは完済してしまうこと。
老後は年金が主な収入源となるため、住宅ローンを残しておくと生活設計が厳しくなってしまいます。
もう1つは退職金で繰上げ返済しないこと。
退職金は大切な老後資金。なるべく手を付けずに残しておくようにしましょう。
そのためには、返済額に無理がない範囲で、当初の返済年数をできるだけ短くしておくことが大切です。
また繰り上げ返済を効果的に行ないましょう。住宅ローンの返済に関しては以下の記事に詳しく書いていますのでぜひ参考にしてください。
冒頭に述べたように、住宅は人生最大の買い物です。お金の面でも後悔しないよう賢い資金計画を立て、素敵なマイホームを購入してください。
執筆者プロフィール:
橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。
住宅ローンの借入可能額は、各金融機関が定めている返済負担率(年収に対する返済額の割合)によって決まります。
例えば、住宅金融支援機構のフラット35では、給与収入400万円以上の人の返済負担率は35%が上限です。民間の銀行でも同程度ですが、フラット35では審査の際、返済負担率を実際の融資金利で計算するのに対し、民間の銀行の場合は「審査金利」という融資金利とは別に定めている審査用の金利で計算をします。
銀行は将来、金利が審査金利の水準まで上がったときにも返済を続けることができるかをチェックするために、審査金利を実際に融資するときの金利よりも高く設定しています。
銀行により審査金利は異なりますが、例えば審査金利が3%の銀行の場合、返済負担率の上限を実際の融資金利の1%で計算してしまうと、審査時に3%で返済負担率を計算した際に返済負担率が上限をオーバーします。そのため、融資金利で想定していたよりも借入可能額が少なくなってしまうことになります。
民間の銀行の借入可能額を計算する際には、審査金利を用いて計算をしましょう。
もうひとつ、ここで気をつけたいのが、審査による借入可能額と、無理なく返せる借入額は違うということです。金融機関が返済負担率を審査する際の年収は税込年収のことですが、実際の手取り収入は社会保険料や税金等が引かれるために少なくなります。
例えば、税込年収500万円の会社員の手取り年収は、家族構成等の条件によっても異なりますが、約72%の360万円くらいです。年間の返済額が175万円の場合、税込年収500万円でみると返済負担率は35%ですが、手取り年収360万円に対してはなんと48.6%になり、手取額のほぼ半分をローンの返済に充てることになってしまいます。
少なくとも「手取り年収」の35%以内に収まる返済額から借入額を決めるようにしましょう。
それでは、年収500万円(手取り年収約360万円)の人が借りられる住宅ローンはいくらになるか計算してみましょう。なお金利1.2%、返済期間35年の場合、借入額100万円あたりの毎月返済額は2,917円です。
まずは、この人が年間でいくらまで住宅ローン返済にあてられるか、返済負担率35%として計算します。
【年間の返済想定額】手取り年収360万円×返済負担率35%=126万円
この人は年間126万円返済できる想定であることが分かりましたので、次に毎月の返済可能額を計算します。
【毎月の返済可能額】126万円÷12カ月=105,000円
金利1.2%、返済期間35年の場合、借入額100万円あたりの毎月返済額は2,917円ですが、この人はその約36倍の105,000円まで返済が可能なので、100万円の36倍になるまで借りても返済することができます。
【借入可能額】36.0×100万円=3,600万円
つまり、借入可能額は3,600万円ということになります。
前述の(1)と(2)を合計すれば、住宅予算の目安が分かります。
仮に自己資金を700万円準備できる人の場合、
(1)700万円+(2)3,600万円=4,300万円が総予算。
総予算の内、諸費用の割合が7%の場合、購入できる物件の価格目安は
4,300万円÷1.07≒4,020万円
となります。
なお、共働きの夫婦の場合、妻の収入を合算したり、夫婦それぞれが住宅ローンを組んだりすることによって借入額を増やすことができます。それぞれの勤務先や年収などによって融資条件が変わるので、詳細は各金融機関で確認してください。
もしも、どうしても希望の物件に予算が足りない場合は、無理をして購入するのではなく、自己資金を増やしたり、年収が上がり借入可能額が増えたりすることによって希望予算に手が届くまで購入のスケジュールを延ばすことも検討しましょう。
住宅ローン選びのポイントは備えと返済計画
ここでは住宅ローンの選び方について説明します。
変動型? 固定型? どちらを選べば良いの?
住宅ローンの金利タイプには、「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3つのタイプがあり、どのタイプを選べば良いのか迷ってしまいます。
全期間固定型の代表的なローンは住宅金融支援機構のフラット35、また民間銀行は変動型や固定期間選択型を主力のローンとしていることが多いです。
住宅金融支援機構の調査(※2)によると、2018年下期に変動型を利用した人の割合は60.3%と6割を超え、固定期間選択型は25.1%、全期間固定型は14.6%となっています。
変動型のほうが固定型よりも金利が低く、金利の差が広がっていることが、変動型が選ばれる大きな理由です。
しかし全期間返済額が変わらない固定型に対し、変動型は将来金利上昇のリスクがあり、返済額の負担が重くなる可能性があります。変動型を選択するならば、金利が上昇し返済額が増えることを想定した場合に、繰り上げ返済などの備えができているかが重要なポイントです。
住宅ローンの返済期間の決め方は?
住宅ローンの返済期間を決めるときに最も大切なポイントは2つです。
1つは定年までに住宅ローンは完済してしまうこと。
老後は年金が主な収入源となるため、住宅ローンを残しておくと生活設計が厳しくなってしまいます。
もう1つは退職金で繰上げ返済しないこと。
退職金は大切な老後資金。なるべく手を付けずに残しておくようにしましょう。
そのためには、返済額に無理がない範囲で、当初の返済年数をできるだけ短くしておくことが大切です。
また繰り上げ返済を効果的に行ないましょう。住宅ローンの返済に関しては以下の記事に詳しく書いていますのでぜひ参考にしてください。
冒頭に述べたように、住宅は人生最大の買い物です。お金の面でも後悔しないよう賢い資金計画を立て、素敵なマイホームを購入してください。
執筆者プロフィール:
橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。
住宅ローンの金利タイプには、「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3つのタイプがあり、どのタイプを選べば良いのか迷ってしまいます。
全期間固定型の代表的なローンは住宅金融支援機構のフラット35、また民間銀行は変動型や固定期間選択型を主力のローンとしていることが多いです。
住宅金融支援機構の調査(※2)によると、2018年下期に変動型を利用した人の割合は60.3%と6割を超え、固定期間選択型は25.1%、全期間固定型は14.6%となっています。
変動型のほうが固定型よりも金利が低く、金利の差が広がっていることが、変動型が選ばれる大きな理由です。
しかし全期間返済額が変わらない固定型に対し、変動型は将来金利上昇のリスクがあり、返済額の負担が重くなる可能性があります。変動型を選択するならば、金利が上昇し返済額が増えることを想定した場合に、繰り上げ返済などの備えができているかが重要なポイントです。
住宅ローンの返済期間を決めるときに最も大切なポイントは2つです。
1つは定年までに住宅ローンは完済してしまうこと。
老後は年金が主な収入源となるため、住宅ローンを残しておくと生活設計が厳しくなってしまいます。
もう1つは退職金で繰上げ返済しないこと。
退職金は大切な老後資金。なるべく手を付けずに残しておくようにしましょう。
そのためには、返済額に無理がない範囲で、当初の返済年数をできるだけ短くしておくことが大切です。
また繰り上げ返済を効果的に行ないましょう。住宅ローンの返済に関しては以下の記事に詳しく書いていますのでぜひ参考にしてください。
冒頭に述べたように、住宅は人生最大の買い物です。お金の面でも後悔しないよう賢い資金計画を立て、素敵なマイホームを購入してください。
執筆者プロフィール:
橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。
橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。