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主婦でも確定申告が必要なケースは?ワーママは確定申告をするとお得な場合も
専業主婦や夫の扶養の範囲で働いている主婦は、原則として確定申告は必要ありません。しかし最近は、20~30代の世代を中心に正社員としてフルタイムで働く主婦も増えていて、あわせて女性の給与水準も上がってきています。そのため、なかには主婦が確定申告をしたほうが得をするケースもあります。ここでは、どのような場合に主婦が確定申告をするのかについて解説します。
増え続けている共働き世帯
日本では、共働き世帯が増えています。1995年に共働き世帯の数が専業主婦世帯数を逆転してからもその割合は上がり続け、2018年には共働き世帯が全体の66.8%と3分の2を超えました。
出産後も、産休や育休後に仕事に復帰したり、子育てが一段落したのを機に再び本格的に働き始めたりするというママも多いのではないでしょうか。
最近は、「人生100年時代」や「老後2000万円問題」が話題になっており、「少しでも老後資金を蓄えておきたい」「世帯収入を増やしてゆとりのある生活を送りたい」などの理由で、共働き世帯は今後ますます増えていくと考えられます。
一方、まだまだ数は少ないですが、男性の育児休暇の取得を推進する動きも見られ始め、今後働き方における男女平等がより進むと予想されます。
このような状況が進むと、なかには妻が夫よりも会社で出世したり、給料が多くなったりすることも増えていくと考えられます。そうなると、今度は世帯全体での税金や手取り額のことも考える場面も増えていくでしょう。
主婦が確定申告をしなければならないケース
妻が会社員や公務員として働いている場合は、夫と同じように勤務先が源泉徴収し12月に年末調整で所得税の精算を行うため、確定申告をする必要はありません。
しかし、妻に限らず次にあてはまる人は、確定申告をしなければなりません。
・給与の年間収入の合計額が2,000万円を超える
・給与所得と退職所得以外に、副業で20万円を超える所得がある
・2カ所以上の会社から給与をもらっている
また、妻が年の途中で退職した場合、会社は年末調整を行わないので、所得税を精算するために確定申告をしなければなりません。結婚や出産をきっかけに仕事を辞めたり、転職をしようと会社を辞めたけれど年末まで転職先が決まらず働かなかったりするケースなどがこれに当てはまります。
なお、このケースでは確定申告が必要と説明しましたが、確定申告をすると払い過ぎた所得税が戻ってくることが多いので、確定申告をしたほうがお得とも言えます。
一方、妻が年の途中で退職しても再就職した場合は、再就職先の会社が年末調整をしてくれるので、確定申告をする必要はありません。ただし、その場合は前の会社で発行してもらった源泉徴収票が必要です。前の会社が源泉徴収票を発行してくれない場合などは、年末調整ができないため、確定申告が必要になります。
専業主婦でも確定申告が必要なケース
パートをしていない専業主婦でも確定申告をしなければならないケースがあります。
それは、ネットオークションやブログの広告収入などで、年間33万円以上の所得がある場合です。所得とは、収入から経費を引いた金額のことです。例えば1万円の材料費でアクセサリーを手作りし、ネットを通じて5万円で売った場合、収入5万円から経費1万円を差し引いた4万円が「雑所得」という所得になります。
所得税には38万円、住民税には33万円の基礎控除があるので、1年間の所得がわずかであれば確定申告の必要はありませんが、所得が33万円を超えた場合は住民税が課税され、さらに38万円を超えると所得税も課税されることになります。
つまり先ほどの例で計算すると、手作りアクセサリーが9個売れた場合は雑所得36万円なので住民税の課税対象となり確定申告が必要となります。さらに10個売れた場合には雑所得40万円なので住民税に加えて所得税の課税対象となり同じく確定申告をしなければならなくなります。
確定申告したほうが得をするケース
1年間に一定の金額を超える医療費を支払った場合、医療費控除として確定申告を行うと所得税の還付を受けることができます。これを医療費の還付申告と言います。
所得のある人は1年間に家族が支払った医療費も合わせて還付申告をすることができますが、夫婦共働き世帯の場合は、夫婦のうち所得税率の高い人が還付申告を行うことにより、戻ってくる税金が多くなります。
その理由は、所得税は累進税率を採用していることにあります。所得税率は5%から45%までの7段階で、所得が低い人には低い税率が適用され所得が高くなるほど税率も徐々に高くなります。
そのため、もし妻のほうが夫よりも適用される所得税率が高い場合は、妻が医療費控除の確定申告をすると税金がより多く戻ってくるのでお得になります。
例えば、妻の所得金額が350万円、夫の所得金額が300万円で医療費控除の金額が10万円の場合、上の表に当てはめると、妻が医療費控除の申告をすると20%の2万円の税金が戻ってきますが、夫が医療費控除の申告をしても10%の1万円しか戻ってきません。ただ、夫婦どちらかの収入が多くても、同じ税率になるなら、どちらが申告しても還付される税金は同じです。
確定申告の話からは少しはずれますが、所得控除を考える場合、夫婦どちらの所得控除にするかで税金も違い、手取り額も異なります。例えば、子などの扶養親族がいる場合にも、夫婦のうち所得税率の高い人の扶養にすると所得税は少なくなります。ただし会社に扶養手当の制度がある場合、扶養がいないと手当てがカットされることになるので、総合的に判断するようにしてください。
ワーキングママは、ふるさと納税や住宅ローン控除で確定申告するとお得に?
妻に所得がある場合、他にも確定申告をするとお得になるケースがあります。
そのひとつは、ふるさと納税です。すでによく知られていますが、ふるさと納税は寄附金控除により所得税と翌年の住民税を少なくすることができ、かつ市町村により魅力的な「お礼の品」がもらえます。お礼の品を楽しみながら節税できるふるさと納税ですが、寄付をする人の所得により最も得をする寄付金の控除限度額が違いますので、ふるさと納税サイトなどの控除限度額のシミュレーションなどを使って確認してください。
なお、ふるさと納税では、寄付をする自治体が5団体以内であれば、ワンストップ制度の特例の対象となり、寄付先の自治体に申請すれば確定申告をしなくても寄附金控除を受けることができます。
また、住宅ローンを利用して住宅を購入・建築する際に、妻に所得がある場合には、夫婦それぞれが住宅ローンを借りたり、妻が夫の住宅ローンの連帯債務者になったりすることにより、夫婦両方が住宅ローン控除を受けることができます。
住宅ローン控除とは、一定の住宅を取得した場合、13年間所得控除が受けられる制度です。当初10年間は、年末の住宅ローンの残高の1%相当額をその年分の所得税額等から控除(控除しきれない場合は一定額まで住民税からも控除)することができ、さらに11~13年目も一定の金額を控除できるというものです。
住宅ローン控除で所得税等の還付を受ける場合は、1年目だけは確定申告をする必要があります。
まとめ
以上のように、主婦には確定申告をしなければならないケースもあれば、確定申告をすることで得をすることもたくさんあります。いろいろなケースを知って、少しでも得をするように工夫をしませんか。
執筆者プロフィール:
橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。
サムネイル:nonpii / PIXTA
パートをしていない専業主婦でも確定申告をしなければならないケースがあります。
それは、ネットオークションやブログの広告収入などで、年間33万円以上の所得がある場合です。所得とは、収入から経費を引いた金額のことです。例えば1万円の材料費でアクセサリーを手作りし、ネットを通じて5万円で売った場合、収入5万円から経費1万円を差し引いた4万円が「雑所得」という所得になります。
所得税には38万円、住民税には33万円の基礎控除があるので、1年間の所得がわずかであれば確定申告の必要はありませんが、所得が33万円を超えた場合は住民税が課税され、さらに38万円を超えると所得税も課税されることになります。
つまり先ほどの例で計算すると、手作りアクセサリーが9個売れた場合は雑所得36万円なので住民税の課税対象となり確定申告が必要となります。さらに10個売れた場合には雑所得40万円なので住民税に加えて所得税の課税対象となり同じく確定申告をしなければならなくなります。
1年間に一定の金額を超える医療費を支払った場合、医療費控除として確定申告を行うと所得税の還付を受けることができます。これを医療費の還付申告と言います。
所得のある人は1年間に家族が支払った医療費も合わせて還付申告をすることができますが、夫婦共働き世帯の場合は、夫婦のうち所得税率の高い人が還付申告を行うことにより、戻ってくる税金が多くなります。
その理由は、所得税は累進税率を採用していることにあります。所得税率は5%から45%までの7段階で、所得が低い人には低い税率が適用され所得が高くなるほど税率も徐々に高くなります。
そのため、もし妻のほうが夫よりも適用される所得税率が高い場合は、妻が医療費控除の確定申告をすると税金がより多く戻ってくるのでお得になります。
例えば、妻の所得金額が350万円、夫の所得金額が300万円で医療費控除の金額が10万円の場合、上の表に当てはめると、妻が医療費控除の申告をすると20%の2万円の税金が戻ってきますが、夫が医療費控除の申告をしても10%の1万円しか戻ってきません。ただ、夫婦どちらかの収入が多くても、同じ税率になるなら、どちらが申告しても還付される税金は同じです。
確定申告の話からは少しはずれますが、所得控除を考える場合、夫婦どちらの所得控除にするかで税金も違い、手取り額も異なります。例えば、子などの扶養親族がいる場合にも、夫婦のうち所得税率の高い人の扶養にすると所得税は少なくなります。ただし会社に扶養手当の制度がある場合、扶養がいないと手当てがカットされることになるので、総合的に判断するようにしてください。
妻に所得がある場合、他にも確定申告をするとお得になるケースがあります。
そのひとつは、ふるさと納税です。すでによく知られていますが、ふるさと納税は寄附金控除により所得税と翌年の住民税を少なくすることができ、かつ市町村により魅力的な「お礼の品」がもらえます。お礼の品を楽しみながら節税できるふるさと納税ですが、寄付をする人の所得により最も得をする寄付金の控除限度額が違いますので、ふるさと納税サイトなどの控除限度額のシミュレーションなどを使って確認してください。
なお、ふるさと納税では、寄付をする自治体が5団体以内であれば、ワンストップ制度の特例の対象となり、寄付先の自治体に申請すれば確定申告をしなくても寄附金控除を受けることができます。
また、住宅ローンを利用して住宅を購入・建築する際に、妻に所得がある場合には、夫婦それぞれが住宅ローンを借りたり、妻が夫の住宅ローンの連帯債務者になったりすることにより、夫婦両方が住宅ローン控除を受けることができます。
住宅ローン控除とは、一定の住宅を取得した場合、13年間所得控除が受けられる制度です。当初10年間は、年末の住宅ローンの残高の1%相当額をその年分の所得税額等から控除(控除しきれない場合は一定額まで住民税からも控除)することができ、さらに11~13年目も一定の金額を控除できるというものです。
住宅ローン控除で所得税等の還付を受ける場合は、1年目だけは確定申告をする必要があります。
以上のように、主婦には確定申告をしなければならないケースもあれば、確定申告をすることで得をすることもたくさんあります。いろいろなケースを知って、少しでも得をするように工夫をしませんか。
橋本 秋人(ファイナンシャル・プランナー)
住宅メーカーで30年以上相続対策・不動産活用を担当。在職中にCFPⓇ、FP技能士1級を取得。勤務先での業務及び日本FP協会埼玉支部、金融機関、一般法人等でセミナー講師、相談、執筆などを経験。
2016年にファイナンシャル・プランナー、不動産コンサルタントとして独立。現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてセミナー、執筆、不動産コンサルティング、相談業務を中心に活動。不動産投資サイト等にコラム連載中。その他メディア執筆多数。
サムネイル:nonpii / PIXTA