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現役先生と専門家に聞く!新小学1年生、自宅での勉強どうすれば?

長かった休校期間は約3か月にも及びました。再開が見えてきたとはいえ、通常授業はまだ先。家庭学習が必然となり、親の心労は重なる一方なのではないでしょうか。中でも不安の声が相次いでいるのが、4月から小学校に通う予定だった新1年生のいるご家庭です。そこで今回ママタスでは、現役の小学校の先生と専門家に、新1年生がいるご家庭に向けてご意見とアドバイスをいただきました。

先生方のプロフィール

まずは、お話を伺った先生方の簡単なプロフィールからご紹介します。

N.Y 先生

■20代女性
■小学校先生歴 4年
■1年生担任経験 なし

M.M 先生

■20代女性
■小学校先生歴 6年
■1年生担任経験 2回

Y.A 先生

■50代女性
■小学校先生歴 19年
■1年生担任経験 1回

金子嘉宏 先生

■50代男性
■東京学芸大学教育インキュベーションセンター教授

Q. 新1年生にとって、この休校が及ぼす1番の影響は何だと思いますか?

A. 学びに差が生じる

子どもは1日1日小さな成長を重ねているので、長期間固まった家族の中でのみ生きていると、今までの小1と比べて人間関係的な学びや学習面での学びに意外と大きな差が生まれそう。
はたして3月末で今までと同じような成長が見込めるのか分からない。(N.Y 先生)

A. 小学校生活に適応しにくくなる

・親と過ごす時間がとても長い異例のことなので、入学した後に母子分離不安のようなものが大きそう。(N.Y 先生)


・幼稚園・保育園からスムーズに学校生活に馴染ませるための時間が不足する。(M.M 先生)


・学校生活が始まってからの今の現状とのギャップで、不登校気味が増える可能性大。(Y.A 先生)

A. コミュニケーションの機会が減る

・友達との関わりが減っていることにより、コミュニケーションがうまくできなくなる。(Y.A 先生)


・子どもの成長過程において大事な「人に褒められる、人を褒めてあげる」ができなくなる。
「友だちに会う」ができず、学校で同期型のコミュニケーションが取れなくなる。(金子先生)

A. ストレスがたまる

長期間の自宅滞在などにより、精神的ストレスがたまる。(M.M 先生)

A. 運動不足になる

肉体的なエネルギーの発散ができない。(金子先生)

Q. 在宅時にやっておいた方がよいと思われることは何ですか?

A. 規則正しい生活をする

・母子分離不安を緩和するためには、規則正しい生活を送ることにつきると思います。学校生活と家庭生活とのギャップが、小1ギャップとして子どもの不安につながります。
規則正しい時間に寝て、起きて、好き嫌いせずに食べること。当たり前のことを当たり前のように時間に従ってできることを目標にしてみるといいと思います。(N.Y 先生)


・毎日学校へ行く時間通りに生活する。とくに、朝は登校時間の1時間くらい前に起こして、トイレを済ます習慣をつける。
1年生の場合、10時間くらいは睡眠時間をとってほしい。(M.M 先生)


・毎日の生活のリズムをしっかり時間割のように作り、家族も一緒にその通りに過ごす。
土日はお休みにするのがポイント。家が居心地の悪いところにならないよう、土日は好きなことをさせる。(Y.A 先生)


・生活リズムを崩さないことは大前提でしょうか。(金子先生)

A. ひらがな・カタカナ学習

・やってる家庭は必ずやっているので、ここで差が出てしまうと、学校再開後にすぐに学習の難しさが出てきてしまうと思う(N.Y 先生)


・ひたすらドリルなどで書いていると嫌になってしまうため、「あ」の文字を練習したら、「あがつく言葉集めをしてみよう」と声かけをする。
たくさん見つかったら、シールなどのご褒美をあげて、やる気を促す。
親子ともにストレスがたまりつつある現状で、お互いの負担にならないように子どもにあったハードルを用意し、少しずつ取り組んで褒めるのが望ましい。(M.M 先生)

A. しっかりコミュニケーションをとる

・人間関係の学びが少なくなっている分、ご家庭での会話は疎まない。話すことで学べることはたくさんある。
とくに、お子さんの小さな呟きから「どうしてそう思ったの?」「どうしてそうしたの?」など考えを引き出してあげることが大切。対人関係作りの補完的役割になる。(N.Y 先生)


・友だちと会うことができないので、『Face Time』などを使って、ときどき会話させる。
また、問題形式で、「今〇〇ちゃんが泣いています。なんて声をかけますか?」「〇〇ちゃんが、〇〇くんに意地悪をいます。どう思いますか?」などと練習しておくと、コミュニケーションに少しでも役立つのではないでしょうか。(Y.A 先生)


・家族同士、子どもたち同士で話をする機会を作ることが大切かと思います。
人を認める、人に認められるということが不足すると思いますので、1日1回ママを褒める、ママはパパを褒める、パパはお子さんを褒めるというようなルールを決めてしまってもいいかもしれません。(金子先生)

A. 学校生活の練習

挨拶をたくさんする。
お散歩のついでに、「子ども110番」の家が通学路のどこにあるかを確認する。
和式トイレ・着替えの練習。ズボンや下着は下ろすだけで全部脱がない、上を脱いだら上を着る、いっぺんに全て脱がないなど。
時間割通りに教科書を準備する。
毎日決まった時間机に座る練習をする。最初は45分机に座ることは難しいため、45分を15分ずつに区切り、15分座れたらトイレなど促し、少しずつ時間を伸ばす。(M.M 先生)

A. 定期的な運動

運動がとにかく不足すると思いますので、好きな曲をかけてあげて一緒に踊ったり、音楽に合わせてラジオ体操をしたりするのもいいかもしれません。(金子先生)

A. 季節を感じられる体験

・学校なら、生活科でアサガオを育てるなどするので、自然と外に出て春らしさとか夏らしさを感じられると思う。
今は外に出られないお子さんもいると思うので、そこのところが欠けてしまう気がする。
感受性豊かな小さな子どもには絶対与えた方がいいと個人的には思います。側溝に生えてるたんぽぽを探すなど。(N.Y 先生)


・植物を植えて、それを観察していくということもありえますでしょうか。(金子先生)

A. 読書

学校でやっても家でやっても差がないものの1つなので、早く字を覚えてたくさん本を読むといいと思います。(N.Y 先生)

A. クリエイティブな活動と記録

何か生活に使えるものを一緒に作る。 
絵日記のようなもので、自分の1日をアーカイブしていくのもよいかと思います。
学校からの課題が過多になっていなければ、何か好きなものをとことん探究するのもよいと思います。
電車が好きだったら、とにかく電車の写真をたくさん見て、その特長を記録していくとか。あくまでも、学校の課題が過多になっていなければです。(金子先生)

Q. リモートワークで忙しいとき、 子供の勉強や生活をどうフォローしたらよいですか?

A. 課題をやったか、毎日必ずチェックする

・学校から出された課題をやったかどうか、1日の終わりには必ずチェックする。(N.Y 先生)


・明日やることの確認、今日やったもののチェック。(M.M 先生)


・学校から出ている課題を一緒に確認してあげる。(金子先生)

A. 目標を決め、クリアしたら褒める

・目当てを達成したときのご褒美。(M.M 先生)


・子どもの学んだ成果を見てあげ、アプリシエイト(高く評価する・鑑賞する・おもしろく味わう・よさがわかる・真価を認める)してあげる。(金子先生)

A. 一緒に過ごす時間・楽しみな時間を決める

・お昼は一緒に食べる。
朝出勤時間がなくなって、余裕ができた分の時間は目一杯甘えさせる。(N.Y 先生)


・おいしいお昼ご飯のお弁当。(M.M 先生)

A. 学習環境を整える

学校から同期型のコンタクトがある場合は、できる限り環境を整えてあげる。(金子先生)

Q. 休校明けにお家でやっておいた方がよいと思われることは何ですか?

A. 子どもの話をしっかり聞いてあげる

・学校の話をよく聞いてあげる。たくさん褒める。「すごいね」「そうなんだ」「なるほどね」など。困っていることがあれば早く気づく。(M.M 先生)


・「楽しかった」と言ってきたことは、一緒に大袈裟に喜ぶ。「大変」「嫌」と言ってきたことは、「こうすれば簡単だよ」とアドバイス。できたら大袈裟に褒める。
「学校って楽しいね」の印象をつけてあげるといいと思います。「いいな〜」と言って羨ましがったり、「楽しそうだね」って言ったり。「置かれてる環境がいいものなんだよ」と印象付けることが大事です。
そのためには、休校中の家での生活が、あまり楽しすぎてはいけないのではないかと思います。(Y.A 先生)


・学校の話を聞いてあげる。子どもは褒めてほしいところを褒めてもらわないと、うれしくないです。
「何が1番面白かった?」「何に1番びっくりした?」「何が1番大変だった?」と聞いて、その部分に共感したり褒めてあげたりするとよいと思います。(金子先生)

A. 神経質になり過ぎない

・すごく疲れると思うのでよく寝かせる。(N.Y 先生)


・学校がどんな感じてスタートするかにもよりますが、あまり神経質になるのもいけないと思います。
今後のために、これが当たり前なんだという空気を持ちつつ、お子さんにとって無理そうなら、手助けが必要かと。(Y.A 先生)

A. 学習フォローの継続

・学校の学習内容の復習。問題数を減らして厳選する。(M.M 先生)


・やってあげちゃうのではなく、一緒にやることが大切かと。(Y.A 先生)


・分散型の登校になった場合、家庭での学習量が増えるということは意識しておいた方がいいと思います。ポイントは以下です。
(1)学習過多にならないように、時間を決めてあげる。家庭学習のペースを決めてあげる。
(2)できれば、一緒に考えてあげる。答えは言わない。
(3)反復練習のような学習は、やりきったこと自体を褒めてあげる。
(4)考えるような課題は、考えきれなくてもよいということを伝えてあげる。
「私にも、分からないなあ」でもよいと思います。
ドリル学習は時間を区切ってあげることが大切ですが、考えるような課題は面白いと思っていたら、時間を区切らないことも重要です。
夢中になる体験はとても大切で、夢中になるということは我を忘れることであり、時間を忘れることなので。気がついたら1時間学んでた! ということはとても素晴らしいです。
その場合、学んだ成果だけでなく、学んでいたというプロセスを褒めてあげることが大切だと思います。(金子先生)

Q. 学年問わずで、休校中に自宅でドリルを進める際のコツを教えてください

A. ご褒美制にする

・学校でもよくやる手法ですが、ポイント制にする。ママに言われなくても宿題に取り組んだら1ポイント、ここまで終わらせたら2ポイントなど、ご褒美を最後に付けるととくに低学年の子は喜びます。
しかし、家庭となると話が違うかもしれませんね。弱気ですみません…。(N.Y 先生)


・ある程度時間を決めて、やりきったらご褒美。(金子先生)

A. 子どもに任せてみる

子どもに任せてみるのも大切かもしれません。親が付きっきりになると、親が隣にいることが当たり前に感じてしまいます。
「お母さん洗濯してきていい? その間自分でできる?」とあくまで子どもに選択させた上で、放ってしまうと自分の言葉に責任感も生まれます。
高学年くらいになると付きっきりが嫌という子も増えてきます。子どもに「やる」か「やらない」かを選択させた上で、「分からないことがあったら声かけて」くらいのスタンスの方が、信頼されてると思って、やる気が上がるかもしれません。そうでない子もいると思いますが…。(N.Y 先生)

A. 干渉しすぎない

親が子どもの領域に踏み込みすぎると、親の言われるがままに、親に言われないと動けなくなります。ある程度任せて、自分の力でできたときに大いに褒めてあげるのがやる気向上の基本です。
偉そうに書きましたが、本当にお子さんによりけりだと思うので、これで万事解決にはならないと思います。
あと、学校としてはこのような状況の中で課題をやってきてくれること、机に向かう時間があること、それだけで素晴らしいな、ありがたいなという気持ちです。ご家庭で気づまりしすぎず、学習なんて学校が始まったらいくらでもできるので、おうち時間の「今しかできないこと」にぜひ重きを置いて欲しいと思っています。(N.Y 先生)

A. 仲間と一緒にやる

誰かと一緒にやるというのも効果的ではないでしょうか。ネットでつながって、「じゃあ、このページ、一緒に何分までやってみよう」というような仕掛けを作ってあげてもいいかと思います。(金子先生)

A. やらずに様子を見る

親が何を言ってもドリルをやらない場合は、やらなくてもいいと思います。
教師として全員が私のような考えかどうかは不明ですが、課題などを出していても、出した側の教師が十分なフィードバックを与えられない中で、子どものやる気をキープさせるのはなかなか酷なことだと思っています。
ご家庭で購入されたドリルにしても、ドリルをやることで、子どもが自分自身の成長や実りを感じることが難しいです(テスト等の節目もないので)。
なので、子どもにガツガツと言って親子関係を損ねたり、外出できない中でストレスが溜まっている今以上に子どもにストレスを与えるのはやめた方がいいと思います。
ただ、やらないことでいつかのタイミングで子どもが「困った」と思う必要はあると思います。課題の提出日前でもいいですし、学校が始まってからでもいいので、そのときには「あのときやってればよかったね」と後悔先に立たず的な話をするのでよいのではないでしょうか。(N.Y 先生)

まとめ

いただいたアドバイスを、すべてこなす必要はありません。休校期間を有意義に過ごすコツは、「これならできそう」と思うものをいくつかピックアップして、続けることです。

また、「他の家庭ではできているのに、うちだけできてない!」と焦る必要もありません。親の焦りは子どもに伝わり、状況を悪化させてしまいます。

経験したことのない状況に焦っているのは、みんな一緒です。学校再開に向け、おおらかな気持ちで、今だからこそ過ごせる親子の時間を楽しんでくださいね。